アメリカの子供たち

学習百科辞典18「英語」(世界文化社)に掲載された作家の中津燎子さんのエッセーより

子供たちだけでなく、アメリカの大人たちもそうですが、皆とても数のことについて注意深いです。日本でも手に持ったおかしの数やカードの数、本の数などを注意して数え直したりする子供たちは多いと思いますが、アメリカの子供たちはもっと気を付けるのです。そしてその上に、その品物の持ち主を必ず確かめるくせがあるのです。最初は、ちょっとうるさいなあ、どうでもいいじゃないかと思うくらいそのくせははっきりしていました。
しばらくたつうちに私は、アメリカ人が使っている言葉、つまり英語そのものがそのようにできあがっていることに気付きました。また私たちが使っている日本語には、数についてはっきり表す言葉がないことにも気が付いたのです。例えば花という言葉には、1本のとか10本のとかの説明がないのです。そして持ち主まではっきりさせなくても日本語は通じるのです。私は驚きました。
例えば日本語で誰かから「鉛筆がとても短いんで困ってるんだ」と言われたとき、鉛筆が何本なのか、誰の鉛筆のことなのかわかりません。でも、そんなことを気にしなくても私たちは心の中で「あっ、この人困ってるんだね、1本貸してあげようか」と思いながら振り向いて「はい、貸してあげるよ」というのです。振り向いて、その人が自分の鉛筆のことを言っているんじゃなかったときは「あっ、そう」で済ますのです。
アメリカの子供たちが毎日、「けさ、2つの玉子焼きと2杯のミルクを、ぼくのお腹の中に入れたんで、はち切れそうだ」とか、「さっき、図書館で3冊の本借りたよ」とか、「私の髪の毛にちょうちょたちが止まったわ」とかしゃべっているのも楽しく聞こえてきました。ときどき私が忘れて数を抜かした英語で話をしたとき、子供たちは目をまんまるくして、「それ2本の手で?」とか、「1本の指で箸を使うの?」と念入りに確かめてきます。私は、ホイ、しまったとばかりに、「2本の手よ」とか、「箸は5本の指で使うのよ」と説明をつけ加えます。子供たちは、フーンそうか、とわかってくれるのです。

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この記事へのコメント

2007年07月16日 09:12
数の話、興味深く読ませていただきました。そういえば、アメリカ人にどこから来たかと尋ねられて、広島からと答えると東京からどれくらいの距離か、というふうに数字を求められることが多いことを思い出します。用意ができていない私は新幹線で何時間とか答えていますが、あまり納得していないようです。
2007年07月21日 16:15
新幹線の速さがどれくらいかわからないんでしょうね。欧米人は数にこだわる民族のようですね。私は大阪出身ですが大阪人は値段にこだわる民族です。すぐ「これなんぼ」と聞いてきます。
通りすがりで恐縮ですが
2007年08月28日 12:07
初めまして!書き込むのは初めてですが、いつも拝見し勉強させて頂いております。エスペラントでも-oj, -ajとしつこく感じることがあるのですが、加算名詞でも複数形を使わなくて良いということになれば、さらに平等な言語になるかと思いました。
2007年08月29日 22:13
いつもご覧いただきありがとうございます。
ヨーロッパ諸語の複数形は日本人には厳密ですからね。わたしも形容詞や関係代名詞の複数形語尾を付け忘れることが多いです。
弟子のひとり
2013年11月13日 01:13
はじめまして! 私たちは中津燎子先生の資料を集めています。センセは、エッセー対談、鼎談など、多くのメッセージを遺しています。が、「学習百科事典18」のことは全く知りませんでした。引用していただいて、ありがとうございます。 センセは 作家とか評論家とか どこ吹く風で、ずっと一主婦でした。すさまじいパワーと魅力で風のように歩く人でした。 弟子のひとり ブログ名“バラと猫と英語びより”

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